いちMLBファンの思い出に残った瞬間 - その1 - 2013年、ナショナルリーグ・ワイルドカードゲーム
自粛モードで気が滅入る日々が続いていおりますが、皆さんお元気でしょうか。
二条です。
あまりにも暇なので、時間つぶしにでもと思い執筆しました。
野球もシーズン開幕が延期され、フルシーズンでの戦いが難しくなる状況ですが、そんな中で昔の思い出に残るゲームを振り返ってみようかと思います。
今回ご紹介しますのは、2013年ナショナルリーグ・ワイルドカードゲーム。
ペンシルベニア州ピッツバーグ、PNCパークで行われたピッツバーグ・パイレーツ対シンシナティ・レッズの試合です。
この試合はパイレーツファンにとっては非常に思い入れのある一戦だと思います。なぜならば、1年前の2012年までパイレーツは20年連続でシーズンを負け越しているという長い長い暗闇の中を航海していたからです。
そんな負の航海もようやく終わりを迎える2013年、新星ゲリット・コールが昇格。エースのフランシスコ・リリアーノやベテランのA.J. バーネットを軸に先発陣が活躍。リリーフではマーク・メランソン、ジェイソン・グリーリのオールスター投手が8回・9回を締める鉄壁の布陣でシーズンを戦い抜きました。
対するレッズもチュ・シンス、ジョーイ・ボットー、ブランドン・フィリップス、トッド・フレイジャーといった強力野手陣に加え、エースのジョニー・クエトから抑えのアロルディス・チャップマンまで投手陣も万全の布陣でポストシーズンに乗り込んできます。
さて、ピッツバーグ・パイレーツはこの試合に臨むにあたって、レギュラーシーズンでは3rdユニフォームに位置する黒を基調としたユニフォームの着用を決定し、選手はファンにも黒い服を着用し球場に観戦に来るよう呼びかけたのです。そう、試合が行われているのに観客席は停電したかのような黒さ。PNC PARK BLACKOUTを発生させようと。
その結果がこちら。
(引用元: https://www.youtube.com/watch?v=BGnPtjFk3Kc)
見渡す限りの黒、黒、黒。
黒いタオルに、黒い海賊旗が振られ、攻撃中も守備中もファンは大声援を送り続けました。
両チームのエースであるリリアーノとクエトの先発で始まった試合が動いたのは2回裏、パイレーツの攻撃。
オールスターに選出されたベテラン、マーロン・バードに先頭打者で打席が回ってきました。キャリア11年目、多数の移籍を経て7チーム目に辿り着いた渡り鳥(スペルはBirdじゃなくてByrdだけど)の、初めてのポストシーズンでの試合。パイレーツと同様に、長い間弱小チームで我慢の時を過ごしてきた男はカウント2-1から4球目の高めに浮いたチェンジアップを振りぬくと、打球は一直線にライトスタンドへ。ポストシーズン初打席での一打、チームに先制点をもたらすソロホームランとなりました。
続くアルバレスがセンターフライに倒れた後、打者にラッセル・マーティンを迎えたカウント1-1からの3球目。スタンドから少しずつ声が聞こえ始めます。
「……トー、……エートー……」
投じたスライダーが外に外れ、カウントが2-1となるころには、はっきりと聞こえるようにな
「クエートー! クエートー!」
「クエートー! クエートー!」
球場に駆け付けたPNCパーク史上最多の観客が、真っ黒に染まったスタンドから投手のクエトの名前を連呼し、プレッシャーを与えます。
クエトにその圧が届いたのか、なんと彼はマウンド上でボールを落としてしまいます。さらに盛り上がるパイレーツファン。
「クエートー! クエートー!」
「クエートー! クエートー!」
地鳴りのような歓声が響くなか、4球目に投じたストレートは吸い込まれるようにど真ん中へ。マーティンほどの打者がそれを見逃すはずもなく、打球は再びレフトスタンドへ。
この瞬間に、もしかしたら勝負はついていたのかもしれません。
3回裏にも得点を挙げ、4回表に1点を返されるも続く4回裏に1アウトからマルテが二塁打。クエトを引きずり下ろしてなおも攻撃の手を緩めずウォーカーが二塁打で1点を加え、マカッチェンの敬遠後にモーノウの四球で満塁とすると、バードのセカンドゴロを守備の名手フィリップスがこぼしてしまい、ゲッツーをとれず追加点。
7回裏にマーティンがこの日2本目のソロホームランを放ち6-1とすると、リリーフ陣が8回・9回を1失点にとどめ完勝。
ファンが常に歓声を送り続け、味方を鼓舞し、相手にプレッシャーを与える。これぞまさに「ファンが10人目の選手になった瞬間」であったと思います。
読みづらい文章だったら申し訳ありませんが、とりあえずマーティンがクエトからホームラン打った動画だけ見てもらえれば僕は満足です。
失礼いたしました。